タイ仕入れと言えば革製品!と言っていいほどレザークラフト商品は人気があります。
私たちのツアーでも沢山の方がレザーの財布、名刺入れ、バッグ、小物を仕入れられます。タイの革製品は縫製の技術の高さからお勧めできる商品です。
そして今回お伝えしたいのは、革が商品になる前の段階である「皮のなめし」についてです。皮が革になるまでのプロセスを理解頂いてより革製品に対しての興味を持って頂ければと思います。
目次
皮のなめしについて学ぼう
革製品は非常に奥が深く、単に「縫製技術」「デザイン」「価格」だけで判断するのはもったいない。
私たちのお客様には革製品についての知識を増やして頂き、商品を最終的に購入されるお客様に商品だけでなく、ストーリーも含めた革製品の魅力を伝える事が出来れるのではないかと考えています。
古来から使われる皮の存在
人類と皮の歴史は長く、古代石器時代から私たちの祖先は皮を防寒に使ったり、身を守るものに使ったりしてきました。
皮がなければ人類は寒さで滅んでいたかもしれないと言っている方がいるくらい、皮は古くから人類にとって貴重なものでした。
また皮は動物から取れるものです。食料として狩猟した動物の全て使うことで敬意を払うことにもなります。
なめさないと使えない
しかし動物から剥ぎ取った皮をそのまま使ってしまえば腐ったり硬くなってしまいます。だから私たちの祖先は皮を使えるようにするように「なめす」という加工処理を発明しました。
なめすことで皮に柔軟性や強度が生れます。柔らかくなった皮は衣類だけでなくカバンのようにものを入れるのにも使えるようになりました。
皮のなめしの歴史
古来のなめし方法
古来では皮を木の棒でとにかく叩く、噛む、燻す、動物の脳や髄液、魚の卵などを漬け込むなどをして、皮をなめしていました。古来の人たちも創意工夫をこらし色んな加工法に挑戦します。
タンニンなめしの誕生
そして紀元前600年ごろに植物の樹液を用いたタンニンなめしが使われるようになり、その後19世紀後半まで特別な皮のなめし方法は生まれませんでした。
クロムなめしの誕生
そして1884年。アメリカでクロム塩を使ったクロムなめしが開発され1930年代に本格的に使われていき革製品は安価となり広く流通していきます。
これらの皮のなめしの歴史を経て、現代で一般的に使われている皮のなめし方法が「植物タンニンなめし」と「クロムなめし」となっています。
皮のなめし方法
皮のなめし方法は大まかのプロセスは世界中で同じです。
・皮についた肉・毛などの不要部分を剥がす
・酸性の液体につける
・皮の繊維が絡み合うようになる
皮の洗浄・不要部分を剥がしてから次になめしの工程に入っていきます。
タンニンなめし
木の皮や果実などのタンニン成分を使って皮をなめします。ピットという浴槽に下処理した皮を濃度の違うなめし液に時間をかけてそれぞれ浸していきます。
タンニンなめしでは皮をなめす工程が多くなり時間がかかってしまいます。
タンニンなめしの特徴
そして、なめし終わった革の特徴としては使い込むごとに革に艶が出てくる経年変化を楽しめる事です。また原皮への影響も少なく丈夫で革にハリとコシが生まれます。
なめす人や環境にも優しく自然で安全な皮のなめし方法です。
タンニンなめしの起源
植物タンニンなめしの起源は、太古の時代に動物が森の中に死骸として横たわっていたのですが、皮は腐敗しておらずキレイな状態でありました。
そこは水溜りで周辺にあった樹木や果実のタンニン成分が水に溶け込み、自然に皮をなめしていた事が始まりと伝えられています。
クロムなめし
化学成分である塩基硫酸クロムを使用した皮のなめし方法です。クルクルと回るドラムを使い化学成分を皮に浸透させていき皮に柔軟性を持たせていきます。
1日で皮のなめしが完了するので大量生産に向いており、現在では8割の革がクロムなめしの製法で作られています。
クロムなめしの特徴
植物タンニンなめしとは違い、変色に強く耐久性もあるので製品の手入れなどはあまり必要されません。
安価で耐久性の強いクロムなめしのお陰で革製品は多くの人々に流通するようになりました。しかし一方でアレルギーを引き起こしたり環境にも影響するという一面もあります。
皮のなめしには大量の水を使いますので、しっかりとした浄水設備のないところでクロムなめしが行われると大変な環境被害が生まれてしまいます。
どちらのなめし方法が良いのか?
植物タンニンなめしとクロムなめしの両方にそれぞれの特徴があります。
商品に愛着を持ちたいなら
タンニンなめしは経年変化があり革製品への手入れをしながら自分だけのモノを育てていくという楽しみがあります。
また自然環境保護の観点からも昨今ではタンニンなめしに注目が集められていますが、なめす工程が多く時間もかかるのでクロムなめしよりも高価になります。
安価で楽を求めるなら
一方でクロムなめしでは製品の耐久性、着色性、防水性も高く、安く手に入るだけでなく革の手入れがそれ程必要とされないという特徴があります。
どちらが良い悪いではなく、それぞれの特徴を理解して頂いた上であなたは何をしたいのか、どういう商品を取り扱いたいのかをお考え頂ければと思います。
まとめ
皮のなめしは古来から続いている製法で非常に興味深いものです。技術が進みクロムを使ったなめしもありますが、それでもまだ100年ほどの歴史しかありません。
「革製品」と普段から何気なく使っていますが、元を辿れば生きていた動物の皮です。それを古来の人々が創意工夫を凝らした加工法を進歩させていき、今では広く私たちの身の回りのものに使われるようになりました。
この歴史までを理解した上でタイで仕入れる革製品の販売やOEMを楽しんで頂ければと思います。